大きな犬を飼うこと。
それが僕たち夫婦の夢だった。
庭のある家が欲しくて、
いろんな物件を見たりもした。
ある日、妻が一匹の猫を連れて帰ってきた。
それがアンチョビ。
猫アレルギーのはずの僕が、
この子にはアレルギーが出なかった。
とても変な猫だった。
顔の広い友達を通じて、里親を探してもらっていた。
ガリガリに痩せてたけど、すごく甘えてきて可愛い。
あまりの可愛さに、うちの家族になってもらうことになった。
チョビの存在が、僕をネコ好きにした。
いや、前から好きではあったけど、
一緒に生活するところまで踏み込めなかった。
僕を変えた。
チョビと生活しだして1年近くなったころ、
妻がもう1匹家族が欲しいと言い出した。
出かけることが多いことから、
お留守番しているチョビが寂しくないようにと。
里親募集のサイトに登録をして、
しばらくして我が家の一員になってくれる子が決まった。
それが、おはぎ。
生後半年だったおはぎは、
チョビと比べると小さくて。
仲良くなるかも心配だったけど、
2人でいろいろ調べて、
2週間かけて少しずつ距離を縮めていき、
ビックリするくらい仲良くなってくれた。
まるで、ずっと家族だったかのように。
昨年いろいろと話をして、
妻の実家をリフォームして、一緒に暮らすことに決まった。
リフォームはすごく忙しい。
でも最近になって形ができてきて、嬉しい気持ちが勝ってきた。
『壁掛けの棚が欲しい!チョビとおはぎがそれに乗って上下運動もできるように!』
と妻が言う。
猫タワーはここに置く。
でも、ここだとカーテンレールに乗るよな。
カーテンレールはそこまで耐久性無いから乗ったらあかん。
じゃあどうすんの?!
そんな小さなケンカもしたり。
でも、そんな相談も楽しかったりする。
あー、また生活変わったら、
いろいろ悪さして叱らなあかんのやろなー。
でも、これからここで色んな思い出ができるな。
って思ってた。
そんな毎日が続いてた。
2014年2月4日
突然元気がなくなったおはぎ。
いつもは本当に無邪気で甘え上手な子。
避妊手術をして一週間たったところだった。
体力が落ちたしストレスもかけたから、風邪をひかせてしまった。
そう思い、朝から妻が通勤前に病院へ連れていってくれた。
熱が高く、貧血がひどい。
血液検査をするから、夕方まで病院で過ごす。
そう妻から連絡をもらい、それでグッタリしてたんかと自分の中で納得した。
夕方、仕事中に妻からケータイに一言だけ結果が連絡入っていた。
おはぎは白血病を発症していた。
気づいてすぐに電話をすると、妻は泣いて言葉にならない様子だった。
検査結果は悲惨なもので、すでに死んでいてもおかしくない数値だということ。
白血病の特効薬は無いということ。
先生からは
インターフェロンというステロイド注射もあるけど、
莫大な費用がかかるし、効果があるとは限らないから。
事実上の、手の施しようがないという宣告。
おはぎの命は、延命したとしてもあと1~2ヶ月という話をされたらしい。
僕が帰ったころにはすでに、おはぎは自分で動くことすらできなくて、
こたつの中でうつろな目をしてふせていた。
妻は泣き続けながらも、おはぎのためにいろいろと用意してくれていた。
流動食や紙おむつ、液状のサプリメント、消毒など、、、
少しでも栄養を取らないとダメだし、
白血球がなくなり抵抗力を無くしたおはぎには、
少しのウイルスや怪我すら命にかかわってしまう。
突然の宣告から、闘病生活が始まった。
おはぎは今日も頑張ってくれた。
明日もまた頑張ってほしい。
妻は言う。
1人でいると、いろいろと考えてしまう。
苦しそうなおはぎに無理やり流動食食べさせて、
薬飲ませて、サプリメントも飲ませて、、、
本当は早く楽になったほうがいいのかな?って。
辛くなる。
どうしたらいいか分からなくなる。
僕にも正直、何が正しいのかは分からない。
でも、正直な気持ちだけ返した。
俺は少しでも長く、おはぎと一緒に過ごしたい。
1日でも1秒でも長く。
おはぎの1番元気な姿も、1番辛い姿も、
嬉しいことも、先日の辛い話も、
全て直接受け止めてきたのは妻。
看病も、ほとんど妻がやってくれている。
僕は妻ほど器用じゃない。
流動食を食べさせるのも、薬を飲ませるのもヘタクソで、
結局はおはぎの負担にならないよう、妻が変わってくれて、
僕は補佐的なことしかできない。
そんな僕でも、家族の前で強がることはできる。
本当はとても辛いです。
でも、辛くて泣くことは後からでもできる。
僕は僕なりに、僕にしかできないことをやる。
おはぎを甘えさせること、声をかけること
精神的、体力的に弱った妻の支えになること
それは僕にしかできない。
妻、妻の子供たち、拾った猫、もらった猫、仕事も金も無かった僕
寄せ集めのような家族だけど、僕の大切な場所。
心の底から守りたいと思う。
明日も家族と過ごせますように。
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こたつの中、グッタリなおはぎさん |
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頭だけひょっこり |
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食事?薬?サプリ?
何が効いたか分からないけど、
夜中、少しだけ元気だったおはぎ |